リョウガのページ

小さな嬉しいことを発見する、今話題のことを思う

言葉のマジック「せっかく」

言葉のマジックをひとつ。

「せっかく」という言葉が使われるのは、

一般的にはマイナスイメージを表すときだろう。

せっかく受験勉強に励んだのに不合格だった。

せっかくの好意を無駄にする、

せっかくだがお断りします、と

いった具合に使う人が大多数を占めるはず。

でも、この言葉を前向きな表現として多用することで

トップアスリートを育成することに繋げた陸上の監督がいた。

 

”せっかく”は漢字で”折角”と書く。

この言葉の語源はには2つの説がある。

中国・漢の時代に五鹿充宗(ごろくじゅうそう)という高慢な学者がいた。

あるとき朱雲という学者が五鹿との論戦で勝利した。

それを見た学者の仲間がが「朱雲(しゅうん)五鹿の角を折った」と

はやしたてた。

このことから”折角”は古くは”力を尽くす”という意味だった。

もう一つの説では、郭林宗という偉い人がある日雨にあい、

頭巾の角がひしゃげてしまった。

それを見た人々が真似で”わざわざ”という意味に使われるようになった。

日本語ではもっぱら後者意味で使われている。

そして、”せっかく”を付け加えると、ガッカリ気分が倍増したような

感じになる。だが、ある五輪メダリストによると陸上の監督は、

この言葉をこんな風に使っていた。

「どんなときも”せっかく”と思えばいいんだよ」からはじまり

「せっかく故障したんだから、しっかり休めばいい」とか、

「せっかくケガをしたのだから、これから注意しよう、って思え」。

メダリストいわく、選手時代は度重なるゲガや故障でずいぶん苦しみ

その都度精神的にもかなり追い込まれた。

もう二度と走れなくなるのではないか、と不安で仕方なかった。

アスリートとしてトップクラスになればなるほど、その不安感は

大きいもの。

そんなときに、監督からこのようにいわれたらどうだろう。

励ますわけでもなく、せめるわけでもない。

でもなぜか、せっかくのチャンスだ、と聞こえてきて何度も励まされた。

そして前向きな考えにに変わっていった。

人生きていたら色々ある。

人生にムダなことはなく、

すべてこのことはいい経験であって、

せっかくの経験をムダにするのはもったいない。

 

このフレーズは現役を引退して何年も経過した今でもなお、

特に印象に残っているという。

マイナスをプラスに変えてしまう奇妙ともいえるこのような表現は、

多くの弟子たちを勇気づけて有力な選手を何人も育てることができた。

まさにマジックそのものである。