リョウガのページ

小さな嬉しいことを発見する、今話題のことを思う

映画にみる組織の緩衝(対立している物などの間にあって、衝突や不和などを和らげる)

これまで観た洋画でどれが一番良かったかと問われれば、

あれもこれもと頭をよぎり返答に困りますが、日本映画

ならば答えに困らない。後にも先にも黒沢明監督の

七人の侍」ほど、興奮し高揚した作品はない。

その「七人の侍」が、4K技術で映画修復され、

全国で放映された。

フィルムにはフィルムの良さがあるだろうが、

デジタルデータに変換された映像は、まるで

修復作業を経たルネッサンス期の絵画のように

鮮明である。変わったのは映画だけではない。

自身がこの作品を初めて見たのは中学生の頃で

あるが、いつしか大人になり作品から感じる

メッセージも随分と変わってきた。

七人の侍」は、農民に雇われた七人の侍

野武士の襲撃から村を守るという話だ。

よって七人の侍が登場するのだが、主役は

人徳者であり強烈な統率力を発揮する勘兵衛

志村喬)と、感情豊かで無鉄砲な菊千代(三船敏郎

の二人。中学生の頃は菊千代の傍若無人ぶりに魅せられたが

大人になって作品を観返すたびに、脇役たちの役割を

深く知るようになった。

七人の侍」の中に「平八」という人物がいる。

彼の取柄は冗談で場を和ますことで、肝心の剣の腕は

”中の下”と評される。僅か七人の組織ゆえに、昔はこういう

冗談ばかりの人間は不必要に思えた。

だが、仲間からは”苦しいときに重宝する”との人物評が生かされる。

世間の商況ひとつみてもそうであるが、組織を取り巻く状況は

苦しい時の方が多い。みんなで難しい顔をして、ふさぎ込んでいても

袋小路に迷い込むだけだ。こういう時、みんなを明るくする人間が

必要なのだ。

七人の侍のなかで唯一の若者「勝四郎」の存在も異質だ。若者といっても

元服(昔の成人式)前であるから設定年齢は16歳前後と思われる。

心も技術も半人前で足手まといになるシーンさえも描かれているから、

昔はどうしてこんな若造が組織に必要なのかわからなかった。

だが、自分自身が若造でなくなってからは、勝四郎の必要性がわかる

ようになった。

組織に半人前の若造いることで、個人は自ずと模範をしめす行動を

取ろうとし、その能力を発揮できる。組織は、「弱いものを守る」

「半人前を一人前に育てる」という目標ができ、より団結できる。

強烈なリーダーとデキル部下のみで構成される組織は、表層こそ

強くとも衝突すると壊れやすい。平八と勝四郎は、いわば組織の

緩衝である。この緩衝があるから組織に柔軟性が生まれ、

組織は強くなる。

強固な組織を作るために大切なのは、表に見えにくい緩衝でると

この名作をみて思った。