モノづくりの哲学
「君たちはどう生きるか」、に生産と消費に関する一節がある。
モノづくりを行う人が価値を生み出すからこそ、人間は人間
らしく生きることができる。今から80年前に書かれたものだが
2017年に漫画化された。
そこにある素晴らしい人生哲学は時代を越えて人々の心に迫り、
訴えかけ、共感を呼び、本書はベストセラーになった。
「生み出していく人はそれを受け取る人より、はるかに肝心な
人なんだ。だから君は、生産する人と消費する人とという、
この区別の一点を、今後、決して見落とさないようにしてゆき
たまえ。」
しかしながら、今の日本では、生み出す人すなわち生産者を
”肝心な人”とみていないきらいがある。ファッション市場を
見てもそれは一目瞭然。服を買っては捨てる消費者、服の
価値を削ぐように安売りする販売者のどこに生産者への
リスペクトを汲み取ることができよう。アパレルも和装も
商慣行改善が業界の課題になっているが、そもそも生み出す人
と受け取る人が本質的に対等な関係にあるというのならば、
そんな問題は生じない。
日本を代表するファッションデザイナー皆川明氏は、1995年に
ブランド「ミナペルホネン」を立ち上げ、オリジナルデザインの
テキスタイルによる服作りを行う学校などでテキスタイルを学んだ
わけではなく縫製工場やオーダーの店で働きながら学び教わった
ことから、モノづくり勤しむ者の想いを深く知った。そして自身が
デザイナー・経営者になってからも、モノづくりに携わる者の生活や
仕事に対する満足を第一に考えてきた。
「モノを作ることはモノの価値をつくることですが、同時にそれを
つくる時間を費やした人の感情をの満足をつくらなければいけません。」
大量生産大量消費時代に多くの経営者が見失っていたものの作り手への
想いが、この哲学にある。