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三方よし 「始末して気張る」近江商人 京都地方

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売り手よし・買い手よし・世間よし

近江商人といえば「三方よし」の言葉が浮かぶ。

原典は江戸中期の近江商人・2代目中村治兵衛が4代目治兵衛を継いだ養子・宗次郎に宛てて1754年にしたためた「宗次郎幼主書置」にある。

幼主書置としたのは事情があった。宗岸が63歳だった1747年、嫡男の3代目治兵衛が34歳で急死した。このためその遺児である娘に、近江商人・片山半兵衛家の子・宗次郎を養子として迎えて、4代目冶兵衛として育てることにした。しかし宗次郎はまだ15歳と若かったため、「書置」という形で4代目冶兵衛としての心得を伝えることとした。

その要点が、現代語訳では、

①行商に行った土地の人々の幸せを最優先にすること

②高い利益望まず控えめに抑えること

③自分本位の欲を抑え、心身ともに達者に過ごすため信心を深めること

という「三方よし」の考え方にあんるわけだが、ただし、2代目の「書置」に「三方よし」の言葉が直接あったわけではない。

三方よし」は、近江商人の研究者だった滋賀大学教授・小倉栄一郎氏が、1988年発行の著書「近江商人の経営」の中で造語としてつくられたもの。それが徐々に広まって、近江商人の理念を言い表すキャッチフレーズになったのだ。

 

近江商人の経営理念を表す言葉にはもう一つ「始末して気張る」がある。「始末」は質素倹約、「気張る」は本気で努力すること。日本ではじめて株式会社の思想を持ち込んだ近江商人・中居源左衛門が、1805年に「金持商人一枚起請文」と題して書いた家訓の中で、その教えを説いた。現代語ではこうなる。

・金が溜まるとか溜まらないとかに、運・不運はない。金持ちになろうとするなら、酒や遊び、贅沢をやめ、長生きを心がけ、始末を第一に考えて商売に励むしかない

・「始末」と「ケチ」は違う。ケチして貯めた財産はすぐに消えるが、始末して蓄えた財産は、やがて現世の極楽浄土の光をもたらせる

・2代も3代も立派な人物を排出するためには、人知れぬ善事を尽くしていくしかない。

そうして@「人知れぬ善事を尽くす」ことが、近江・京都地方では「おきばりやす」という独特のあいさつ表現にのこっているわけだ。

「気張る」・・・その行き先に幸せがある。と信じているのだろう。