オーダースーツ市場の伸びの秘密「カシヤマザ・スマートテーラー」
家計調に基づく紳士スーツ市場のピークはバブル期1992年の約7700億円で、2008年に3000億円ラインを割り、現在では2300億円程度と推測される。
この10年の落ち込みは平均単価の下落、団塊世代の引退に加え、近年ではオフィスのカジュアル化が大きい。しかしながら、この流れに逆行するかのように例外的に伸びているアイテムがある。
オーダースーツだ。
このほど600店もの大量閉店を発表したオンワードにおいても、2年前に開始したオーダースーツ事業「カシヤマ・ザ・スマーテラー」は急成長しており、今期の売り上げ実績は前年比62%増の60億円を予想する。
他にも、アパレルに、生地問屋に、量販店にと市場参入し、先月には紳士大手青山商事が新たなオーダースーツブランド「シタテ」を立ち上げたことが話題になっている。
オーダースーツといえば、かつては仕立て屋が一枚ずつ型紙から起こす伝統的な方法が主流であったが、平成時代、採寸と試着のみで注文するイージーオーダが一般的になった。
価格は主流が5万円程度と高くはないが安くもない。デメリットとしては、完成イメージのわかりにくさや、店舗での採寸を要するために何かしら敷居の高さもあった。
オンワードのオーダースーツは3万円からの提案で、オプションの追加料金もわかりやすく、完成イメージはIT技術の進化により着用イメージを画像で確認できる。他社のそれも同様のサービスを提供する。つまり、従来のオーダースーツにおける難点を解消し、新たな顧客を獲得していつともいえる。
さらにいえば、オーダースーツが伸びている要因として、オフィスのカジュアル化が背景にあるとの見方もある。一見、カジュアル化とオーダースーツは相対するものであるが、余りにカジュアル化が進んだことで、一着ぐらいはきちんとしたスーツをもっておきたいという ”一張羅需要” がめばえているのだという。
しかし、オーダースーツが伸びている真の理由は、別のところにある。
実のところ、家計調査に基づく今年の紳士スーツ市場は前年比マイナスで推移している。理由は単純なところである。
3万円でオーダースーツが買えるのだ。しかも市場競争により消費者の選択脂が増えた。
同価格帯の既存スーを買っていた者が、低価格オーダーを買うようになっただけではないか?
市場全体で売れている数は同じだから、オーダーが伸びていても市場は回復しない。