「素晴らしき日曜日」を観て思ったこと
こんばんは。
今年のゴールデンウィークは黒澤明監督の初期作品を観て過ごしました。
今日はその中から 「素晴らしき日曜日」 をご紹介します。
終戦直後の1947年(昭和22年)に公開された映画です。
若いカップルがまだ焼け跡が残る東京の街でデートする映画で、2人の眼を通して当時の世相、持てる者と持たざる者を映し出し、最後に2人の将来の夢を語らせるという内容です。
古い映画だけど明るくシンプルでテンポも良くて、観る者を飽きさせない。今も昔もさほど変わらない、どこにでもいる優柔不断で頼りない普通の若者の姿を等身大に描いています。
ストーリーは次の通りです。
とある日曜日、雄造と昌子はデートで待ち合わせるんですが、雄造は浮かない顔つきです。所持金は2人合わせてわずか35円(現在の3500円程度)。
仕方なく行き当たりばったりで街をぶらつくがロクな目にあわない。
一緒に住むこともままならなかった2人は住宅展示場を見学するが、10万円の家は高嶺の花である。二人でも借りられそうなアパートを訪ねるも無駄骨だった。
子供の野球に加わったが打球が饅頭屋に飛び込み弁償させられてしまう。キャバレーの経営で羽振りがいい知人の店を訪ねると店員に物乞いと間違われて屈辱的扱いを受ける。
突然の土砂降りでずぶ濡れになって、コンサート会場でダフ屋と喧嘩し、喫茶店ではぼったくられてスッカラカンになってしまう。
雄造は昌子を自分の下宿に連れて行き、彼女の体を求める。怖れた昌子は部屋を飛び出すが、やがて観念したように戻ってきて、泣きながらレインコートを脱ぎはじめる。心を打たれた雄造は「ばかだな、いいんだよ」と、昌子をいたわり詫びる。
雨がやみ、そして日比谷野外公会堂に足を運び、雄造はオーケストラの指揮の真似をして昌子に「未完成交響楽」を聞かせようとする。
しかし、いくらタクトを振っても曲は聞こえない。すると昌子はステージに駆け上がり、客席に向かって叫ぶ。「皆さん、お願いです! どうか拍手をしてやって下さい!」この言葉に励まされた雄造が再びタクトを振ると、『未完成交響楽』が高らかに鳴り響くのだった。
二人の間もギクシャクしせっかくのデートは踏んだり蹴ったり。
喫茶店を出た二人は夜の焼け跡で忘れかけていた将来の夢を語り合う。
「結婚したら二人で小さい気持ちのいいベーカリーをつくろう。
おいしいコーヒーやお菓子を安く売ろう。
店名は 『大衆の店ヒヤシンス』。
薄利多売でいい。
安くて良心的な店をつくって、あんな店を叩き潰してやる。それが義務だ」。
将来を悲観していた二人は人生の目標に向かって歩んでいくことを誓い合うののだった。
そしてクライマックスで、二人の前途に立ちふさがるであろう苦難を暗示する実験的な演出が試みられている。
ここから先は映画の最大の見せ所なので、ぜひとも映画本編をご覧くださいね。
ところで、当時の黒澤明監督は日本が経済大国になることなど知る由もないはず。しかし驚くべきことに、黒澤監督は劇中で雄造に 「安くて良心的な店をつくろう」 と言わせています。
知って知らずか、これこそが戦後の企業家が事業をおこすきっかけとなった 「気付き」 なんです。
奇しくもダイエー・中内功氏の 「良い品をどんどん安く消費者に提供する」 とよく似ている。
終戦直後のヤミ市では食料品や生活物資が法外な値段で売られいたんですね。統制解除を機にヤミ業者はその稼ぎを原資として信用を重んじる真っ当な事業をおこし、日本の商業を大きく発展させました。
その一方で悪徳な商売は通用しなくなって、影を潜めていったんです。
果たして、おカネもノウハウもない雄造と昌子は夢を叶え、幸せな人生を送ることができたのでしょうか?