カンダタって知っていますか? 芥川龍之介の蜘蛛の糸
知り合いの子供に小学4年生の子供がいました。
夏休み恒例の読書感想文に苦しんでいると聞いて、
芥川龍之介をすすめました。
どうして芥川龍之介なの? と聞くので、
彼は100年前の小説家で高い評価を受けていたこと、
彼の作品は読みやすくストーリーが面白いこと、
そしてなによりも有名作品のほとんどが短編であることを話した。
読書感想文を書くには、
まずは一冊の本を読破せねばならない。
蜘蛛の糸にいたっては文庫で読めば数ページ。
蜘蛛の糸は、芥川の作品のなかでも傑作として名高い。
ある日、天国にいるお釈迦様が地獄をのぞくとカンダタという極悪人が
苦しんでいた。
彼は大泥棒にちがいなかったが、地獄に堕ちる前に一度だけよいことをしたことを思い出した。
森を通るときに足元の蜘蛛を踏みつぶさずに助けたのだ。
そこでお釈迦様は天国から蜘蛛の糸を垂らして、カンダタを助けようとした。
カンダタが糸をのぼっていくと、他の罪人たちもその後に続いてきた。
これでは糸が切れてしまうとあわてたカンダタは
「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は俺のものだぞ。
お前たちは一体誰にきいて、のぼって来たのだ。下りろ、下りろ」と
わめいたところ、今まで何とも無かった蜘蛛の糸がぷつりと音を立てて
切れてしまった。
この一部始終を見ていたお釈迦様は 「おぞましい」と落胆した。
芥川はこの作品を児童向けに書いたというが、人生の酸いも甘いも噛み分けて大人が読んでこそ、作品に込められた主題をより深く味わう
ことができる。
自分だけが助かればいい、自分だけに利があればいいという人間のもつエゴイズムのあさましさを、子供の頃は嘲笑できたかもしれない。
だが、いまカンダタと同じような状況に立たされたとしたら、
彼と同じ行動を取らないと言い切れるだろうか?
商売では、経営者の 「より儲けたい」 という強いエゴが企業成長の
肥やしになっている。
だが、そのエゴが強すぎては企業にとってマイナスだ。
会社の利益のために従業員を酷使する、
1円でも安く仕入れようと取引先を泣かせる。
これでは自分だけがカネを手にしても、いずれ社内からも社外からも
相手にされなくなる。
自己の利ばかりを追うあまり、他者からは強欲者・エゴイストとして映り
「あさましい」 と後ろ指を差されていては、時代を超えて子供たちから
嘲笑されるカンダタと同じだ。