当社が発表したものではありません
当社が発表したものではありません
上場企業のプレスリリースを見ていると
「本日の一部報道について」 という題名を見かけることがある。
その内容は 「本日、一部報道において〇〇と報道されましたが
これは当社が発表したものではありません」 と、先のマスメディアの
報道を否定するものになっている。
ただ、数日後にほとんど同じ内容のプレスリリースが公式に発表されていたりして、 「おやっ」 と首をかしげることがある。
東京証券取引所は2014年5月に適時開示制度の一部を変更して、
スクープ報道や誤報に対して 「踏み込んだ情報開示」 を求める制度を導入した。
紋切り型のコメントを一掃し、具体的で明確なコメントを出すように求めたました。
例えば 「〇〇社と当社が□□の検討を進めていることは事実ですが、
本件に関しては×月×日の取締役会に付議する予定であり、決定次第公表いたします」 というように開示するのが望ましい。
この制度の導入から6年が経過して、ほとんどの上場企業で詳細な
状況説明が記載されるようになった。
では、このような企業を悩ますスクープ報道や誤報がなぜ発生するのか、マスメディア側の事情を調べてみました。
近年はマスメディアも経営不振が続いて、聞くところでは記者にも厳しいスクープノルマを課すこともあるらしい。
ライバル他社に先駆けて特ダネを流すことができれば売上げアップにつながるため、スクープ報道に躍起になっている。
しかし、ライバル他社を出し抜くために功を焦る余り、しっかり裏づけを取らず、不明確な情報を憶測のまま見切り発車で報道してしまうことがある。
これを 「飛ばし記事」 という。
事実関係の確認が不十分なまま間違った記事が新聞紙面などに出てしまう。
この飛ばし記事の一種で、官僚や企業の人事について発令以前にマスメディアが憶測で報道する 「新聞辞令」 がある。
嘘か本当か、社内の派閥抗争で対抗派閥に有利な人事を潰すために内部から意図的にリークされることもあるらしい。
また、訃報、選挙報道などの速報に備えて何パターンかの 「予定稿」
をあらかじめ用意しているものだが、これも誤報を招く一因ともなっている。
予定稿が締め切りのドサクサで取り間違えられ、チェックも怠って、
そのまま報道に乗ってしまケースが多いらしい。
その他、あらかじめ 「〇日付け」 というリリース元の意向をないがしろにして指定日前に報道してしまうこともある。
誤報を出したマスメディアの関係者は社内規則で処分されると聞くが、
果たして抑止力として機能しているのか。
いずれにせよ、マスメディアのスクープ報道や誤報は企業イメージを損なうばかりか、内容次第では株価へも影響を及ぼしかねない。
詳細で丁寧な状況説明による迅速な ”火消し” が肝要です。