新春のテレビ番組を見て、文春の表紙を連想しました。
新春のテレビ番組で料理愛好家の平野レミさんが、
牛に見立てた牛カツのレシピを披露していました。
料理の他にも今年の干支に因んだものがもう一つ、
レミさんの着ていた牛と部位が描かれたセーター。
彼女が明るく弾けるキャラクターにマッチしたカラフルで愛嬌のあるそのセーターを、デザインしプレゼントしたのは夫でイラストレーターの、故 和田誠さん。
早いもので、亡くなってから1年ほどのときが流れました。
和田さんは音楽や映画、落語に精通して、生涯手掛けた仕事は似顔絵などを始めとしたイラストレーション、本の装丁やロゴのデザイン、アニメーション制作から映画監督、エッセイの執筆や翻訳と、
ここに書ききれないほどマルチに活躍していました。
携わったクリエイティブな仕事における面白さとセンスの共存には改めて脱帽するほかありません。
日本で「イラストレーション」という言葉をいち早く使い、広めたのも他ならぬ和田さんです。
代表作としてぱっと思いつくには、煙草「ハイライト」のパッケージ、百貨店の包装紙、「ゴールデン洋画劇場」のオープニングのアニメーション そして何といっても、「週間文春」に表紙のイラストでしょうか。
編集者からこの仕事を依頼された際、描くモチーフについて受けた要望は「ご自由に」。
そこで彼が描いたのは、鳥や猫をはじめとした動物、日本や世界の旅先で風景、植物、キッチンなど身近に置かれているものまで、とにかくバラエティに富んでいました。
ちなみにはじめて表紙を手掛けた1977年5月に選ばれたモチーフは、三日月が浮かぶ星空の下にひそむエアメールをくわえた緑の羽の鳥でした。
また「表紙はいたう」と名付けられた小さな欄には、イラストについて短い説明が掲載されていて、表紙とセットで楽しませてくれました。
文春の表紙はイラストだけでなく、誌名のタイトルデザインから文字色までも和田さん自身が決めていた。
何を描いてもいいと制約の無さにかえって頭を悩ませ、締め切りの3時間前になっても題材が決まらずまわりをハラハラさせたこともあったそうです。
それから様々なものを実に40年にわたり描き続け、2017年7月に迎えた2000号には、初回のエアメールをくわえた緑の羽の鳥 が再び登場、今度はその鳥が羽ばたき海を渡っている姿が描かれました。
ときに俗物的なスキャンダル記事が誌面をにぎわしてもどこ吹く風。
常に喜んでくれる人のために何かを作り続けた和田さんの作品は、現在も「アンコール 表紙はうたう」 として再掲載され、私たちに変わらずうたい語りかけています。
今日は、病院通いで疲れた~。おわり