昔思い出した悲しい唄で始まる「パルナス」
ぐっと かみしめてごらん
ママの 暖かい心が
お口の中に しみとおるよ パルナス
甘いお菓子の お国のたより
おとぎの国の ロシアの
夢のおそりが 運んでくれた
パルナス パルナス
モスクワの味 パルナス パルナス パルナス
ではじまる、CMソングしっていますか?
パルナスの唄・・・
神戸新聞のウエブサイトに3月20日、
「ピロシキの名店「モンパルナス」移転尼崎で48年経営、大阪へ」
という維持が載っていました。
モンパルナスは兵庫県尼崎市の阪神電鉄尼崎駅構内にある喫茶&ベーカリーで、関西では有名なピロシキ(ロシア伝統の総菜パン)のお店です。
かつて「モスクワの味」をキャッチコピーとして近畿一円に280店を展開した洋菓子チェーン「パルナス」創業者の親族が、1074年に独立開業したものです。
本家本元のパルナスは2000年に廃業しましたが、モンパルナスはその「関西人の思い出の味」を今日まで継承してきた知られざる名店なんです。
記事によると、モンパルナスが閉店する理由は、コロナ禍で客足が遠のき、売上げが半減したためらしい。3月末に閉店後、大阪府豊中市で5月に再オープンを予定しています。
ところで、パルナスといえば、40歳代以上の関西人なら誰でも子供の頃観た「怖いCM」が強く印象に残っているはずです。
日曜朝の「リボンの騎士」や「ムーミン」などのアニメ番組のCMとして数十年にわたって放映されていました。
女優の中村メイコが歌い上げる「パルナスの歌」はロシア民謡の哀愁漂うメロディーで、本当の母の愛情溢れる優しい歌詞なのに、色あせた赤ちゃんのモノクロ写真やレトロ風のアニメとも相まって不気味さが際立っていた感覚が残っていました。
関西人の心を激しく揺さぶる不思議で懐かしいCM。
パルナス製菓㈱は、兵庫県加西市出身の古角松夫氏によって1947年に神戸で創業しました。神戸では亡命ロシア人が戦前に創業したモロゾフやゴンチャロフが有名でしたが、古角氏は復員船で食べたピロシキが忘れられず、ロシア風御菓子にこだわり続けました。日ソ国交回復後はモスクワの菓子工場を視察してまわり、ソ連最大の国営菓子メーカー・ボルシェビーク製菓工場から社会主義労働者英雄の称号を持つ超大物菓子職人イヴェドキヤ・オージナを招聘。
彼女の技術指導によって本場のロシアの味を完成させました。1970年の日本万国博覧会ではソ連館のレストランの運営を受託するほどでした。
しかし、パルナスはその後、洋菓子需要の落ち込みと同業他社との競争激化で売上高の減少が続いたため、1990年代末に事業の縮小・整理を進め、2000年に豊中の本社工場と全店舗の営業を停止、2002年3月に会社を清算しました。
驚くべくことに、これほどの事業展開にもかかわらず、黒字・無借金経営であり続けたらしく、そのおかげでキレイに解散することができたようです。見事な引き際といえます。
創業者の古角松夫氏は2004年に逝去しましたが、その知られざる経営手腕はもっと世の中で注目されてあるべきではないでしょうか。