俺の後ろに立つな
俺の後ろに立つな
”裏側” で知らない者はいない・・寡黙な超A級スナイパー
の活躍を描いた 「ゴルゴ13」
の劇画家 さいとうたかおさん (本名・斉藤隆夫) が亡くなった。
「ゴルゴ13」 は、1968年発売の「ビッグコミック」新年号から連載を開始して、今年でなんと53年目を迎えます。
現在も連載中で、ストーリは600話超え、シリーズの累積発行部数は3億を超えるというからすごい。今年7月に発売した第201巻は
最も発行巻数が多い単一漫画シリーズのカテゴリーで、ギネス世界記録に認定されました。
それにしても「ゴルゴ13」は稀な劇画作品ですね。圧倒的な存在感を放つヂューク・東郷は偽名で、本名、国籍、年齢、経歴いずれも不明。
余計なことは一切喋らず、速やかに世界の要人などの暗殺を遂行するのだが、イデオロギーや構造的に敵対するどちらの側からの仕事も引き受けというのは珍しい。
実は、アクションシーンはそんなには多くないんです。
読み進めるうちに、国際情勢、政治、経済、宗教、歴史、文化などの知識が次第に身につく大人の教科書的な要素が詰まっています。
その時代や状況によって変わる国や組織、個人の正義や悪にはうそがあることをあぶり出す。偽善者の愚かさを描くタッチは作者の哲学なんだろうと思う。
記念の201巻「最終通貨の攻防」では、通貨がテーマになっている。
全く新しい金融システムが完成すると、膨大な利益が消えることを恐れたイギリスの金融一族が通貨の考案者を探し抹殺する。
一方、財政危機回避のウルトラCとして新通貨を導入したいアメリカオマカ大統領。敵対する共和党からの依頼を受けて偶然同じ現場に出くわすゴルゴ・・・。
思いもよらない発想、展開、結末どれをとっても舌を巻くばかりだ。
そしてこれまでの作品中にあるゴルゴのしゃれた台詞も見逃せない。
「俺の後ろに音もたてずに立つようなまねをするな」というのは知られていますが、ほかにも、
「俺は・・・この目で見たことしか、信用した事がない」
「俺は、どんな権力だろうと、特定の相手を顧客に持つ気はない・・・二度と俺に近づくな」
「その正義とやらは、おまえだけの正義ではないのか」
組織にとらわれず、自由に、自分しか信じない、一匹狼。何か集団社会の色濃いこの国には似合わないような異才。
変なつまらない組織もうこりごりだ。 私もこうなりたい。
さいとうさんの遺志のもとで「ゴルゴ13」の連載は、スタッフと編集部が協力して今後も継続する予定だそうです。
ゴルゴファンとしては GOOD NEWSだ。・・・