史上最も恐ろしい数学問題 「マクローリン級数を第n項で切ったときの剰余項」
史上最も恐ろしい数学問題
風雲急を告げるウクライナ情勢ですが、今から100年ほど前のウクライナも、
ロシア革命の余波で勃発したソビエト・ウクライナ戦争によって混乱状態に陥っていました。
歴史的悲願であった独立を果たしたウクライナ人民共和国軍とソビエト赤軍、ロシア白衛軍、ウクライナ革命蜂起軍(黒軍)、緑軍パルチザン、ポーランド軍が入り乱れて相争っていました。
今回の主人公であるロシア人数学者イーゴリ・タム(当時25歳)は、オデッサ大学で教鞭をとっていました。
彼は後に物理学者として大成功して、チェレンコフ効果を発見した功績で1958年に
ノーベル物理学賞を受賞することになる俊才です。
1920年2月、ウクライナの黒海沿岸にあるオデッサに、赤軍が白衛軍との戦闘に勝利しソビエト政権を樹立しました。
かつて、黒海の真珠、とうたわれていた美しい港湾都市でしたが、戦乱で破壊され、
飢饉に襲われつつありました。
8月某日、タムは食料を求めてオデッサ近郊の農村に出かけたところ、
アナキスト(無政府主義者)のネストル・マフノ率いるウクライナ革命蜂起軍(黒軍)
の部隊と遭遇する。その時、タムの服装が農村には場違いな都会人のそれであったため
赤軍の手先と疑われ、身柄を拘束されてしまいました。タムを尋問した部隊長は
もし本当に数学者なら マクローリン級数を第n項で切ったときの剰余工項 を答えてみろ。 正解できなければ銃殺だ。
と銃を突きつけてきた。恐怖に振るえながら何とか正解を導き出すと、
なるほどお前は本当に数学者のようだ。と納得し、釈放されたという。
これはタムの友人であった理論物理学者ジョージ・ガモフのち著者にある逸話。
この問題は高等数学でもかなり特殊な分野に属する問題で、正解をラグランジュの
形式で書くと、
F(X)=f(0)+f´(0)x+f"x2/2!+・・・f(n-1)(0)xnー1/(nー1)!+Rn(x)で、
Rn(x)=f(n)(ξ)xn/n! ただし0<=ξ<=x となる。
これはネット検索で見つけたもので、チンプンカンプン。
かくも絶体絶命の危機を切り抜けた数学者タムの面目躍如だが、この難問を
即座に出題し、正解と認めた部隊長はもっとすごい。
一体何者なのだろうか。
数学が苦手な人は 数学なんか勉強して実社会で一体何の役に立つのか と
疑問に思うかも知れないが、数学を知ることは論理的思考を身に付けることでもある。
数学とはロジック(論理)であって、記号を使って言いたい事を表す道具に過ぎず、
実社会に応用できてナンボの代物。
数学を応用すると、コピー用紙の縮小・拡大を平方根(√)で計算できる。
ゴミ箱にティッシュを投げる捨てるとき、二次関数y=ax2を使えば、
放物線の計算ができます。そして マクローリン級数を第n項で切ったときの剰余項
がわかると、赴任先の紛争地帯でゲリラに捕まっても助かるかもしれません。
どこで数学が役立つか、その時まで分からないものですね。