ひまわりの種の象徴 ウクライナ
「ひまわり」という映画を知っていますか。
1970年に公開されたイタリア映画。
戦争で引き裂かれた夫婦の物語で、第2次世界大戦中、ロシア戦線で行方不明になった
イタリア兵の夫を探して、妻が終戦後のソ連・ウクライナを漂泊するという内容です。
主演は、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン。
東西冷戦時代にソ連が積極的に映画撮影に協力したことでも知られています。
ヘンリー・マンシーニの悲しいメロディともあいまって、なんだか懐かしい名作。
この映画で最も印象的だったのは、地平線まで広がるひまわりの畑です。
ソ連時代のウクライナ南部、ドニエプル川河口付近のヘルソン州で撮影されました。
ひまわりはウクライナを象徴する花で、7月頃から一斉に咲き誇る。
ひまわりは16世紀初頭に原産地の北アメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれ、
ロシアへは17世紀に入ってきました。ロマノフ王朝第8代ロシア皇帝エカテリーナ2世の時代に不凍港(黒海)を目指した南下政策の一環として、温暖なウクライナにひまわりの栽培が広がりました。
当時のウクライナでは、ロシア正教によって四旬節と呼ばれる40日間の断食期間が
定まられていました。
その期間中は食べ物には制限がかけられていましたが、その断食リストに新しい作物
だったひまわりが含まれて居いなかったため、代替食としてひまわりの種を食べる習慣が始まりました。
現代では、ウクライナは世界最大のひまわり生産国で、種から搾油したサンフラワーオイルは多くの国々に輸出されています。
ウクライナの土壌はチェルノーゼムと呼ばれる肥沃な黒土で、ひまわりのほか小麦や
トウモロコシ、砂糖の原料となるてんかん菜が主作物となっているんです。
そして今、ひまわりはウクライナの抵抗のシンボルになりました。
2月24日、ヘルソン州ヘニチェクスで、武装したロシア兵に地元の女性が詰め寄って
怒りをぶつけている動画は撮影されていました。
その女性は「オマエたちは占領者だ!ファシストだ!この銃で何をするの?
このひまわりをポケットに入れろ。オマエたちはいずれここで死ぬ。
そのあとにはひまわりの種が咲くだろう」、・・・
と、武器を持つ相手に一歩もひるまず、ひまわりの種で抵抗して、
そう言い放ったのだ。創造して欲しい。
死んだロシア兵のむくろが朽ち果ててチェルノーゼムに還り、
そこにウクライナを象徴するひまわりが咲き誇る姿を。
相手のロシア兵は何も言い返せず、困惑の表情を浮かべるのみでした。
悲劇が繰り返されるとするなか、はたして私たちは、同じ境遇に立たされたとき、
このウクライナの女性のように立ち振る舞う勇気はあるだろうか。