石川さゆりさんの装いの美
歌謡曲でもう一丁。
去る5月29日、7522頭の頂点を決める日本ダービーが東京競馬場で行われ、
ヅウデユースが優勝しました。競馬界のレジェンド、53歳の武豊か騎手が前人未到の
ダービー6勝目を飾って、盛り上がりを見せました。
当日、ダービー発送前のセレモニーに国歌独唱を行った歌手 石川さゆりさんも
話題になって、歌声のみならず、着物姿も素晴らしくて、印象深く驚きました。
そのきもの姿は、深い緑の無地着物に金じきの帯。深い緑の無地着物は競馬場の
ターフの色に対し、深い緑の着物はいささか地味に映りました。
しかし、もしターフのように鮮やかな緑では華美になってしまう。ダービーの主役は
あくまでも馬。柄のない色無地で謙遜を表したのでしょうか。
金色の帯の模様について、菖蒲じゃないかというツイートが相次いで、菖蒲の柄に
勝負(しょうぶ)を引っ掛けているという見方がでていました。でも、しばらくすると
燕子花(かきつばた)という意見もあって、その根拠として、尾形光琳(おがたこうりん)の燕子花図の画像と帯を比較する人も現れました。
確かに尾形光琳の燕子花図は背景が金色地であって、どうやらこちらをモチーフした
帯だとおもわれますね。
いずれ あやめか かきつばた、という慣用句がります。アヤメ、カキツバタ、いずれも美しく似ていて区別がつきにくい、優劣がつきにくい、ことを意味します。
アヤメを漢字でかくと「菖蒲」。菖蒲(ショウブ)と同じです。ショウブの花としれ知られるのは、アヤメ科のハナショウブで、菖蒲湯に使われるショウブとは別の植物なんです。
カキツバタ、アヤメ、ハナショウブの違いは分かりにくいけれど、どれも5月が見ごろの花です。
ここに、よく知られる競馬の格言があります。皐月賞は、最も速い馬が勝つ、
菊花賞は、最も強い馬が勝つ、これに対して日本ダービーは、最も運のある馬が勝つ、
と言われているんですね。
そして、帯の模様であったカキツバタの花言葉は、幸運は必ず訪れる、と・・・
きっと石川さゆりさんはすべて知っていて、この装いを選んだのでしょう。
無職地で出走馬を立てて、カキツバタの帯で季節感を出して、競馬界最高峰の勝負への思いを伝えた。
まさしくこれが装いの美意識というものでしょうか。すごい。
「馬の走る音、リズムがあって躍動的で心が躍ります。競馬場には初めて参りましたが、あの澄んで優しく、賢さを秘めた瞳と力強く疾走する姿は、本当に美しいと思いました。馬たちの眼差しを見ると、レースに臨み力の限り走るのは、他ならぬ自分たちの意思でありプライドだと思いました。
優勝されたドウデュース、武豊騎手、関係者の皆様、おめでとうございます。熱い走りに清々しい気持ちをいただきました。サラブレッドたちは私の歌を聴いてくれたでしょうか」