子育て百態
子供を母乳で育てる「魚」がいる。
繁殖期にオス・メスがつがいになっ50~300個の卵を産み、夫婦で
抱卵する。
珍しいのは、卵が孵化し、稚魚になってから1週間ほど経ってから。
親は体から粘液状の栄養を分泌し、稚魚はそれを食べて育つ。
その分泌物が「ディスカスミルク」と呼ばれる。
もちろん正確には「母乳」ではないけれども。
魚にはいろいろな出産・子育ての習性をもつものがいる。
ディズニー映画「ファインディング・ニモ」の主人公ニモは、
よく言うカクレクマノミではなく、実はイースタンクラウンアネモネフィッシュとい別の種族である。
ともあれカクレクマノミの稚魚は、孵化した時はすべてオスとして生まれくる。
その中で最も大きく凛々しい一匹がメスに転換し、2番目に大きいオスと結婚
して卵を産む。
さらに驚くのは、そのメスが死ぬと、さっきまでのオスが再びメスに性転換し、
3番目に大きいオスと結婚する。
カクレクマノミのような魚を、「雄性先熟」型と呼ぶが、逆に最初はすべてメス
として生まれた中からオスに転換する「雌性先熟」型もあって、このように生涯
の間に性転換する魚はコブダイ、サクラダイなど実に1000種類を超える。
子育て法がユニークな魚では、アフリカの湖に棲むシクリッド(カワスズメ)
が、テレビなどで時々紹介されていて知られるように。卵が産まれるとき、
他の魚に食べられないように、親が自分の口の中に含んだまま育てる。
ところが、その習性に目を付けた横着者がいる。
シンクリッドが口の中で育てている卵の中にこっそり自分の卵を紛れ込ませ
一緒に守ってもらうのだ。おまけに、シノドンディスの稚魚はシクリッドより
早く孵化して、シンクリッドの卵を食べて育つ。
ほかにも、自分が産んだ卵を孵化して稚魚になると、彼らが独り立ちするまで
自分が産んだ卵をエサとして与えるナマズの仲間・カンパンゴや、そのカンパンゴ
は産卵した同じ場所に素早く自分の卵を産み付け、一足先に孵化した稚魚がカンパンゴの卵を食べて育つように仕組むナマズの仲間・サプアもいる。
「おやまあ」とあきれてり魚たちの子育て百態。
しかし、それぞれの懸命さ理解できる。
比べて悲惨な事件が相次ぐ最近の日本人の子育ての非情さが、
よけい悲しくなる。