「同名異種」・ホトトギスの本性
近くの公園の花壇で、ホトトギスが咲いている・・・と書くと
戸惑う方がいらっしゃるかもしれない。
「ホトトギスって、『鳴くまでまとう』の鳥じゃないの?とね。
名前は同じでも生まれた世界が違う「同名異種」の生物が、
以外に多いんです。
ちょうど頃の季節に、食べると美味しいキノコの名前でもある。
「シマアジ」は太平洋岸で獲れる高級魚だが、冬に大陸から渡って来る鴨の仲間にもある。
ほかにも「クロサギ」=鳥と魚、
「アオサギ」=鳥と貝、
「クロヅル」=鳥と植物、
「タイワンヒヨドリ」=鳥と植物、
「ベニスズメ」=鳥と昆虫、
「ヤツガラシ」=鳥と里芋、
「ホトトギス」もそんな同名異種の一例で、秋の季節に咲き始めるホトトギスは、ユリ科の属する日本固有の植物のほう。
白地の花弁に散る大小の紫色の斑点が、野鳥のホトトギスの胸毛の様子に似ていることから、そう名づけられた。
「永遠にあなたのもの」「秘めた意思」「永遠の若さ」などとかなり情熱的なそ花言葉は、野鳥のホトトギスにまつわるイメージが影響しているのだろう。
鳥のホトトギスは、万葉集に153首も詠まれるほど日本人に古くから親しまれてきました。ただ、同じ読み方でも
不如帰、杜鵑、時鳥、など多くの漢字表記や、文目鳥、童鳥、妹背鳥など別名が多い点に特徴がある。
その理由は古代中国・蜀を舞台にした故事に起因する。
「泣いて血を吐くホトトギス」と例えられるのは、泣くときに見えるその口の中が真っ赤だから。若くして結核に陥った正岡子規は、従軍記者として渡った中国から帰る船の中で吐血。自分の死期をを悟り、俳号を「子規」に変えた。
そんなふうにか弱いイメージのホトトギス、しかし実際は強か。
自分の卵を、ウグイスの巣に産み落として育てさせる。しかもホトトギスはウグイスよりも早くふ化し、後からふ化したウグイスのヒナを巣の外に放り出して、エサを独り占めする。江戸時代の俳人・宝井其角は「あの声で、トカゲ食らうかホトトギス」と、ホトトギスの「見かけによらない本性」を句に読んだ。
人間も、ホトトギスと一緒、見かけだけでだまされてはいけない。