セールスとスルーセ・メンツ・ゴマすり・判断基準
アル大企業に勤めている知人が一時期、なかなか
営業成績が伸びないことに気を病んでいた。
聞くと、扱っている商品は結構名前の通っているもの。
以前は一般消費者相手の営業部署にいたのだが、
その頃は消費者に向かって宣をどんどんやれば売れた。
ところが、法人相手の営業部署に異動になったとたん、
営業成績が落ちていったという。
その要因は、一般消費者相手と同じ営業手法を取って
いたからだった。
個人相手の営業と、法人や役所を相手にする営業は
その手法が180度違う。
個人相手がセールスならば、法人・役所相手はセールスを
逆さに読んで「スルーセ」と呼ぶのがふさわしいほど
手法が違う。スルーセの名付け親はある経営コンサルタント。
その人の解説によると、普通の一般消費者はどの会社の製品が
良いかわからない。だから、テレビで人気俳優を起用した
CMが多く流れているとか、何かの賞ををもらったとか、
新聞に書かれているなら、信用して購入する傾向が強い。
ところが、スルーセでは宣伝とか商品の性能は二の次となる。
法人・役所の営業の場合は窓口となる担当者が存在して
どの商品を選定するかを決める。
その際の判断基準は少しぐらい価格が安いとか、他社より
製品が優れているということではない。
自分の財布からお金を出すわけでもない。
判断基準は一にも二にもメンツであることが非常に多い。
つまり、担当者にとってその商品を選ぶことが出世のプラスになるかどうか、社内から批判されないか、自分の顔がつぶれないかといったことに尽きる。
セールスとスルーセの最大の違いは、売った後の付き合い方にも
ある。消費者とはかなりの距離があるが、法人・役所相手では
担当者に気に入ってもらいリピータになってもらわあねば
営業マンは話にならない。
どうすればいいかというと、決しておべんちゃらやゴマすりを
やれというわけではない。
まず相手のメンツを立てること。そして契約後に商品に何か
問題が生じたときには、相手が社内で評価が落ちないように
一緒に隠密裏に問題を処理したりすれば、その営業マンは
安泰である。
これを知っているとたとえ三流品であってもたくさん売ることが
できる。えてして一流企業といわれるような所に勤める人ほど
スルーセについて何もわかっていないもんだが、冒頭に知人は
以上のような話を知ってからは営業成績がV字回復していった。
スルーセを知らないばかりに、せっかく開発した素晴らしい
商品が、優秀な営業マンが、日の目を見ずに消えていった例は
数え切れない。