リョウガのページ

小さな嬉しいことを発見する、今話題のことを思う

旅館の再生

あの、”百万石”がリニューアルオープンしていた。加賀・山城温泉の「ホテル百万石」である。明治40年「操業、2万坪の敷地内に別館、庭園、プールを備えたき巨大温泉リゾートは全国的に著名であったが、2012年9月から営業を停止していた。

バブル崩壊前、加賀温泉郷は関西からの団体客で賑わっていた。大型旅館は美術品を至る所に展示し、大浴場の広さを競い、バーやスナックを併設し、町歩きせずともすべてを旅館内で消費できる体制を作り上げた。その頂点が百万石。

 

しかし、不況のおりから社員旅行そのものが減り団体客が激減、各旅館は個人客を取り込むべく低価格路線に舵を切ったが、客数・客単価ともに落ち込む中、大型旅館ほど固定費が重くのしかかった。加賀温泉郷では生き残った先を数えた方が早いくらい、倒産の嵐が吹き荒れた。山代の山下屋、山中のよしのや。いずれも、同じ温泉郷の名門であったが、いずれも倒産し、格安旅館チェーンの手に渡った。

大江戸温泉物語」、「湯快リゾート」。経営が傾いた、あるいは倒産した旅館の債権を安く買収し、再生を手がける旅館チェーンだ。

利用した時のこと。車で玄関前に乗り付けると、フロントの奥から従業員が出てきて誘導を受けた。チェックインも同じ従業員から館内施設の説明を受けた。フロントで渡された館内地図を頼りに自分で荷物を自分の部屋まで運ぶと、すでに布団が敷いてあった。夕食はバイキング。ビールを頼もうとボーイを呼ぶと、駐車誘導とチェックインをしてくれた従業員が飛んできた。昔は、駐車係、フロント、仲居、レストランのボーイとそれぞれの担当者がいたことだろう。それが徹底的な合理化のもと一人三役も四役もこなす。

復活した百万石のWebページをみたところ、宿泊料はかつての半値以下の水準だ。それでいて当時と変わらぬ巨大施設を維持するのだから、採算が合うように徹底的な合理化を図ったことだろう。運営するのは格安旅館チェーンではないが、関西でファッションホテルをチェーン展開するビックグループ。

「老舗の名旅館が安物になった。」と揶揄するものもいるだろうが、現実を言えば時代・顧客志向の変化、すなわち個人客のニーズに合わせてこうなった。無論、かつての百万石の隆盛と高級感を知るものとしては、ある種のさびししさを感じる。