リョウガのページ

小さな嬉しいことを発見する、今話題のことを思う

適正距離はあるのか

自宅の近所に、おいしいと評判のケーキが自慢のカフェがあった。

行列ができる店だった。

過去形なのは、短期間で閉店に追い込まれたため。

私も一度人に連れられて店に行ったことがあるが、

再び行きたいとは思わなかった。

その理由は、店がぎゅうぎゅう詰めだったこと。

多くのお客さんを迎えれるべく、もともと狭い店には

所狭しとイスとテーブルが並んでいる。

テーブルを仕切るパーテーションなどは一切なく

隣の見知らぬお客が座ると席の距離は30センチほどという

かろうじて人が通れる狭さ。

そもそもカフェは、ゆっくりと落ち着いてコーヒーを飲みながら

友人とおしゃべりしたり、商談したり、あるいは1人静かに休息

したりする場所。

会話が赤の他人には聞かれたくない内容もある。

しかし隣の席と距離があまりにも近すぎると、

ゆっくりと落ち着いて過ごすの不向き。周囲を見てみると

楽しく話しているお客はほとんどいなかった。

結局、もくもくと飲食して短時間で退店した記憶が残っている。

肝心のケーキの味は、あまり印象に残らなかった。

なぜ、このような店を作ったのか。

行列を作るお客に配慮して少しでも待ち時間を減らそうと考えたのか。

あるいはもっぱら利益追求のためだったのか。

今となってはわからない。

人間には適正距離というものがある。

飲食店のテーブル席や電車の座席に1人分の空間をあけて座る

光景が典型的。

それ以上密着すると、ひとは不快度が増してくる。

身動きの取れない満員電車では誰もが不快に感じるだろう。

適正距離を知らなかったことが、評判とは裏腹にその店の経営が

苦戦を強いられた理由。

最近業績が好調な大手コーヒーチェーンは、空間への配慮が行き届いている。客と客との距離が適度に離れており、たとえ混んでいても隣の席は

気にならず、落ち着いて過ごすことができることから来店客が途切れない。

反対に、ひたすら回転率にこだわるファーストフード店はぎゅうぎゅう詰め

でも構わない。

お客の方は、混雑を承知のうえで来ていて、長居する気はあまりない。

かつて一世を風靡したディスコも、狭い空間にぎゅうぎゅう詰めだった。

ディスコの場合、わざとぎゅうぎゅう詰めにすることで、みしらぬ客同士で

連帯感を生じさせたりして、興奮を起こさせる狙いがあった。

これはお客に非日常的空間を提供するのに効果的な演出だった。

そういえば、電線にとまる鳥さえも等間隔に並んでいる。鳥でも

心得ている適正距離を知らずにビジネスをしたら、痛い目に合う。