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遅くても正しい判断ができる脳の「Cシステム」とは

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遅くても正しい判断を助ける脳の「Cシステム」とは

 人生とは、まさしく判断の連続。仕事で決めることや住居の選択はもちろん、今日の服装、会議でどんな発言をするか、ランチに何を食べるかなど…人間が生きていくには毎日、それこそ毎分毎秒、さまざまな判断を下す必要があります。

そこで、今回は脳の仕組みを上手に生かしてさまざまな局面で“より自分に利益をもたらす判断”をしていくための方法を紹介します。

 

まず、人間が意思決定を下すときには、主に脳の2つのシステムを使っています。1つが、ものごとを迅速に判断する「Xシステム」と呼ばれるもの。

Xは「reflex=反射」からとられたもので、“反射システム”と置き換えて考えてもよいでしょう。このXシステムの特徴は、反射的にものごとを素早く判断できることですが、速いだけに「拙速な判断になりやすい」という弱点があります。

 

そこで注目したいのが、人間が意思決定をする際のもう1つのシステム「Cシステム」です。

Cは「calculate=計算する」のCと考えれば覚えやすいでしょう。こちらの特徴は、Xシステムに比べるとずいぶんスピードが遅いかわりに、ものごとを慎重に判断できること。いうなれば、ものごとを長期的な視野に立ってより正確に、合理的に判断できるシステムなのです。Cシステムはその特性上、“熟考システム”と置き換えて呼んだらわかりやすいかもしれません。 

たとえば、会社ですごくイヤなことがあったケースでも、Cシステムを通せばすぐに会社を辞めたりはせず、まずは辞めるべきか残るべきかをじっくり考え、そのうえで「辞めても、いまの会社以上の職場を見つけるのは難しそうだし、いま抱えている問題は腰を据えて対処すれば、おそらく解決は可能。だからいまは会社に残るべきだ」と慎重かつ合理的なジャッジが可能になるのです。

決断力のある人“と聞くととても頼もしく、かっこよく見えます。片や”優柔不断な人”と聞くと、なんだか頼りなくてだらしない感じがします。でも、日々の生活では、情動に任せてどんどんものごとを決めていくよりも、長い目で見て慎重に判断したほうがいい結果となることがはるかに多いものです。

つまり、優柔不断は決して悪いことではなく、じっくり考えている証拠といえるのです。

 

判断力を鈍らせる原因は「睡眠不足」だった!

 このように、合理的な判断をもたらしてくれるCシステムをうまく作動させるためには、逆にCシステムがどんなときに作動しなくなるのかを知っておくのがポイントです。そうすれば大切な判断をするとき、絶対に失敗したくないときに、Cシステムが鈍ってしまう環境を意図的に避けることができるからです。

 では、どんなときにCシステムが鈍ってしまうのでしょうか。まず注意すべきなのが「睡眠不足」です。じつは睡眠不足が意外なほどCシステムに悪影響を及ぼすのです。

たとえば、ある調査では、睡眠が不足しがちなグループと、十分に睡眠をとっているグループを比較したところ、なんと睡眠不足の人たちのほうが、いわゆる「ワンナイトアフェア」と呼ばれるパートナー以外との交渉が多かったのです。要は浮気行動に出やすいということです。

さらにはもう1つ、睡眠時間と食べものに関する実験があります。こちらは8日間にわたって人為的に睡眠不足にしたグループと、正常に眠らせたグループの、1日あたりのカロリー摂取量を比較したところ、睡眠不足のグループのほうが1日あたり約500キロカロリーも多く摂取してしまったといいます。

 このように、睡眠が不足することで、ふだんは働く「浮気はいけない」という自制心が鈍くなり、後先を考えずに浮気行動に出てしまう。

同じように睡眠不足で「これ以上食べてはいけない」という自制心が鈍くなり、毎日ラーメン1杯分も多く食べてしまう。たかが睡眠不足とはいえ、これによって起こる“判断ミス”とそのマイナス効果は、イメージ以上に大きなものとなり得るのです。

“素敵な先延ばし”が正しい決断を生む

 睡眠不足と同様に、Cシステムを大きく鈍らせてしまうものがもう1つあります。

それが「アルコール」です。こちらに関しては、お酒をたしなむ人なら少なからず実感があるのではないでしょうか。

 たとえば、昼間は暴食をがまんできるのに、お酒を飲むと甘いものやラーメンが完全解禁になってしまう。お酒を飲んだときほど、いわなくてもいいことや相手に失礼な言動を口にしてしまう。お酒の勢いで、たいして好きでもない相手と関係を結んでしまった…など。これらもまさしく、アルコールによってCシステムが鈍り、合理的な判断ができなくなってしまった末の結果です。

 では、これを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。

一番の特効薬は、お酒が入っているときには大切な判断を下さないことです。重要な判断が必要となりそうな商談や打ち合わせは、なるべくお酒の席で行うのを避ける。近ごろ、ランチミーティングなんて言葉が聞かれるのは、そうした意味合いもあるのでしょう。お酒でCシステムが狂いがちな人は、これを活用するのがいいかもしれません。

 もし、お酒の席で判断を迫られたら、「うまく先延ばしする」というのも有効な一手です。「どのプランでいくか、いま決めてもらっていいですか?」と迫られた場合、「もう少しだけよく考えたいので、その件に関しては明日、こちらからメールしますね」と答えるなど、上手に工夫してみてください。これならCシステムが弱っている状態での判断を避けることができ、期限を決めてこちらから返事をするといっているので、相手の心証もそれほど悪くならないはずです。

 そして、この「素敵な先延ばし」作戦は、お酒の場以外でもとても有効です。なぜなら、睡眠不足やアルコール以外にもCシステムが働かなくなってしまう大きな要因が「焦り」だからです。

 前述のように、先方の目の前で「いま決めてください」と迫られたときや、言葉に出さなくとも、その場に「さっさと決めてほしいな」という無言の圧力がかかっている場合、あるいは返答をする期限が決まっている場合など、人間は焦って充分に検討されていない“とりあえず”の決断を下してしまいがちなのです。

 そこで有効なのが「素敵な先延ばし」。「持ち帰らせてください」でもいいですし、「後ほどメールします」でもOKです。

さらに、「慎重に判断したいと思いますので~」「御社のことをとても大切に思っているからこそ~」など、“重要だからこそ決断は先延ばしにします”という枕詞をつけると、より心証がよくなります。

 仕事ができる人ほどうまくやっているものです。まわりにもそういう人が必ずいると思いますので、ぜひ経験者の巧みな先延ばし術を取り入れてみてください。