物づくりの鉄則 小さなことをおろそかにしてはならない。
昨年、新しい自動車を買った知り合いの話。
今年に入って、クルマのリコールの通知が来たそうです。その内容を読んで、
先進のテクノロジーによる安全運転支援システムを備え、モバイルオンライン
サービスに対応したインフォテイメントシステムなどをアピールした最新のクルマ。
そうした新しい技術や車の基本構造に欠陥が見つかったのかと心配になったが、
読んでみると、後席中央乗員用シートベルトの部品が擦れてシートの表皮を
損傷する恐れがあるというもの。その部品を交換するというのがリコールの内容
である。
最新鋭の技術なら、時には不具合が生じることもないとは言えないが、シートベルト
のバックルなどずっと以前からあるもの。それこそそれまでにシートベルトが付いた
クルマを何千万台と造ってきており、今頃不具合が生じるのは不思議である。知人は
走行にまったく関係ないため、いずれなんかのついでに交換する予定という。
自動車におけるリコールは設計や製造段階を原因とする不具合が発見された場合、
道路運送車両法第63条の3に基づき、国土交通大臣に届け出て無料で修理する制度
のこと。最近のリコールの特徴は一度に大量に発生するといわれている。先月月発表さ
れたスバルのエンジン始動の不具合のリコール対象車は226万台にのぼる。
なぜ最近は大量に生じるのか、自動車関係者によると「第1は電子化が進み、ソフト
ウェア開発が複雑化していることと、第2は部品の共通化が進み、1つの不具合が多く
の車種に影響を与えること、3つ目は品質問題が問われることが多く、従来ならリコールしなかったような問題もリコールで対処するようになったため」と言う。
リコールの判断は以前は法令そん守や技術的な問題があるかどうかだったが、最近は
お客様の安心安全に主眼を置いたものに変わってきているという。またリコールは
誇れることではなく、技術力が落ちているとも指摘する人もいる。
しかしこのケースは技術的な問題ではなく、先進テクノロジーの開発にばかり目が行き
昔からの基本的な小さなことがおろそかになったとしか思えない。
リコールによる影響、交換や修理作業にかかるロスやメーカーへの信頼など、小さな
ミスがもたらす損失は計り知れない。基本的なこと、小さなことをおろそかにしては
ならない。これはモノづくりの鉄則であり、グローバルな大企業の例外ではないのでは。