キャッシュレス決済は進んだか
日本一長い天神橋筋商店街に寄った歳によく食べに行くそば屋さんがあります。
創業は昭和48年というだけあって、店の雰囲気はレトロすぎる。いまどき、かやくごはんとそばのセットが370円の安さで、来客もひっきりない。つい先日も食べに行って、帰り際に深い考えもなスマホを差し出して決済をしようとした。ところが中年女性の店員いわく、現金払いのみだという。申し訳なさそうに「周りの店みんな、キャッシュレス決済をしているのに、すみませんね。うちの店は考えが古いので」といっていました。
消費税率引き上げによる消費の落ち込みを防ぐため、買い物代金の最大5%をポイント還元する制度が実施されている。期間は来年6月まで。はたして、この店員の言うように、周りの店はみんながキャッシュレス決済を導入しているのか、商店街を北から南へ歩いて調べてみた。
結論から言うと、この商店街でキャッシュレス決済に対応している店(なんとかペイというシールをはっている)の割合は約30%だった。確認日は消費税が10%になってから40日目。
対象は小売関係の約300店舗。パチンコ店や医療関係は除く。
そういえば、増税から10日ほど経過した時点で天神橋筋商店街を取材した週刊誌の記事を読んだ。
その記事では、この商店街にけるキャッシュレス決済の評判の悪さを伝えていた。
記事によると、次のような反応に集約される。
・この商店街の客層は60歳以上が多く、現金しか信じないからあまり意味はない。
・薄利多売な商売人にとって、手数料を払ってそんなことをするぐらいなら、その場で値引きしたほうが明快だし、お客さんも喜ぶ。
・1年後にはスマホ決済手数料を事業者に払うことになる。それを払っていたらバイト1ヵ月分の人件費になる。バイト1人雇い楽したほうが得だ。
従って、その時点で同商店街において何とかペイというシールを貼っている店は50軒に1軒ほどの割合しかなかったという。2%の低さだ。
それから1ヵ月ほど経過したわけだが悪評もなんのその、結構健闘している。シールを貼っている店の傾向に偏りはない。
冒頭のそば屋さんと同様の考えと思われるような、古いたたずまいの文具店とか書店、たばこ屋、八百屋とかもベタベタとシールを貼っていたりする。
逆に、シールがみあたらない今風のおしゃれな飲食店も多い。シールが増えたのはスマホ決済事業者の営業努力や、時流といった要因もあるはず。
今後、日本社会でキャッシュレス決済がいかほど進展するのか。種々雑多な業種や考えの店・お客がひしめく天神橋筋商店街を定期的観察すると、その進展具合をつぶさに把握できるだろう。