昔、かつて飲食営業緊急措置令がありました。
かつて飲食営業緊急措置令があった。
昭和22年(1947年)7月、政府は「飲食営業緊急措置令」という政令を出しました。
飲食店の営業を全面的に禁止したもので、違反した業者は3年以下の罰金を科すという厳しいものでした。
店主だけでなく、客も1年以下の懲役か、1万円以下の罰金。
当時の貨幣価値からするととんでもない額ですね。戦後の食糧事情のひっ迫を受けて、外食券食堂、旅館などの許可された店以外での商売を禁じ、24年に廃止されるまで2年続いた。
統制経済下とはいえ飲食店にとっては死活問題です。そこで抜け道を考えた。「裏口営業」です。休業を装い、非合法の営業を続ける店もありました。表通りからは閉店しているかのように見せかけ、実際には別の出入り口から入ると、こっそり営業していた。特別な顧客向けである。
「裏口入学」という俗語が生まれる前に、裏口はすでに存在していました。
この時代、「タケノコ生活」という言葉が良く聞かれました。食糧不足で、農家に着物を持ち込んで、米などの物々交換した。振袖や、帯、羽織が食べ物に換わる ”タケノコの皮を一枚一枚剥いでいく” そんな生活を指した表現でした。そんな時代だから、裏口営業の特別客とは闇市や払い下げなどで大もうけした成金たちだったのではないでしょうか。
現在、飲食店には「緊急事態宣言」再発令で営業時間の短縮が要請されています。対象地域で要請に協力した飲食店には、自治体が協力金を支払い、そうした飲食店と取引のある中堅・中小事業者にも、一時支援金が支給される。
一方で、13日から施行された新型コロナ対応の改正関連法では、「蔓延防止等重点措置」が新設された。都道府県知事は事業者に営業時間の変更を要請でき、命令に違反した事業者には20万円以下の過料を科すことができます。
正当な理由無くマスクを着用しない客の入場禁止も明記されました。
規制は厳格化され、私権も制限されていますが、罰則は懲役刑はなく、行政罰にとどまっていることだけを見れば、国の対策措置の乱暴ぶりは弱まったといえなくもない。
だからといって、今も昔も店舗ごとに抱える事情や考え方が様々であることは変わりありません。営業時間短縮要請に協力を続けてきた店舗が大半とはいえ、罰則を科されても営業を続けるという店舗や、事業継続が困難と断腸の思いでのれんを下ろした数々の老舗もあります。
中には屋台から始めて成功したものの、今回廃業に至った名店もありました。
戦後の飲食営業緊急措置令が廃止されてから72年。
再びこうした事態になるとは思いもよらなかったですが、一日も早く、飲食店が賑わう日を心待ちにしたいですね。もしかしたら屋台ではないけれど、キッチンカーから事業を再開する人だって現れるかもしれない。
そうした店が何十年か先に名店になっているかもしれない。
人の営みとはそんなもんかもしれません。