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海洋マイクロファイバー問題に新説

イギリスの科学雑誌ニュー・サイエンスのWebサイトに6月5日、

「There might not as many  microplastic fibres in oceans as we feared 」 という記事が掲載されていました。

「海洋に極めて大きな影響をおよぼすとされている『マイクロプラスティック繊維』は、実際には我々が恐れているほど多くない」 という内容。

プラスティック繊維の粒子は意外と少なく、むしろ綿、ウールなどの天然繊維の粒子の方が圧倒的に多いのではないかということです。

近年、海洋プラスティックごみ、なかでも微小なマイクロプラスティックが環境や生態系に影響を及ぼすことが懸念されています。我々が普段着ている衣服を洗濯したときに発生する極小の粒子(マイクロファーバー)もその一つ。ポリエステル製の衣類を洗濯機で洗うと、1回あたり50万個のマイクロファイバーが放出されるという。これが下水処理施設をすり抜けて海に流れ出て、海洋汚染の元凶の一つとなっています。

しかし記事によると、南アフリカケープタウン大学の研究者ピーター・ライアンのチームが、世界の主要な海洋から採取した961の海水サンプルから得られた平均1ミリメートルの長さのマイクロファイバー(2000個)を赤外分光法とよばれる手法で分析した結果、ポリエステルやナイロンなどのプラスティック繊維はわずかに8%に過ぎず、その大部分が天然繊維であったことがわかったのだそうです。

内訳をみていくと綿が50%を占めていて、これについでウールが12%、続いて絹、麻などであったらしい。これまで世界中で製造されている繊維製品の約3分の2がプラスティック繊維であるとされてきただけに、今回の天然繊維が圧倒的に多いという測定結果は意外なものでした。

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これについてライアン氏は、 「天然繊維は以前考えていたよりもゆっくりと分解されている可能性があって、現在海洋に漂っている天然繊維のほとんどは何十年も前から海洋を汚染しているものである」。また、 「多くの天然繊維は染料などの科学物質でコーティングされていて、生分解性が低下しているらしい」とコメントしている。

どうやら我々は、「天然繊維は地球環境にやさしく、すぐに自然に還ってしまうはずだ」 という前提にとらわれすぎていたのかもしれません。

この説が正しいと仮定すると、分解されなかった天然繊維の粒子が長い年月で蓄積されて、プラスティック繊維以上の脅威となっていることになる。

いずれにせよ、海洋の環境や生態系に対する悪影響という点では天然繊維もプラスチック繊維も同じである。

記事は「衣類から環境に入るマイクロファイバーの数を減らすよう努力すべきだ」 というライアン氏の言葉で締めくくられている。