「総額表示」による17年目の値札問。
17年目の値札
今年、4月1日、17年に及んだ混乱にようやく決着がつきます。
店頭の価格表示問題 です。
元々は2003年10月に「消費税転嫁特別措置法」が施行されて、
2004年4月から「総額表示」が原則義務付けられていました。
しかし、「外税表示」「内税表示」に関する規制がなかったため、
値上げのインパクトを抑える外税方式を選ぶ企業も多く、
いまだに「本体価格+税」という表示(外税表示)と「総額表示」(内税表示)とが混在していました。
買い物の際、アレっと思ったことのある方もいたでしょう。これがようやく「総額表示」に一本化されます。
14年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた時点で「消費税転嫁対策特別措置法」が施行され、18年9月に総額表示に一本化されることになったが、その後21年3月まで期限は延長されていました。
17年もの歳月を要した理由はいくつかあるが、値札の付け替え作業にかかる人力と費用も一つ。特に衣料品のように季節性のある業界にとっては様々な問題が懸念されていた。
例えば、3月31日と4月1日では春物商品に変わりはない。
スーツのような商品なら前日の値札の上に税込み価格のシールを添付するか、追加の下げ札を付ければいいんです。
しかし、靴下ともなると、その作業は膨大になる。徹夜の作業も覚悟しないといけない。また、前シーズンのセール品にも同じ作業が必要になってきます。今年の秋冬商品は春先にバーゲン品となることを想定すれば、出荷の段階で総額表示にしておかないと、二度手間になる。
繊維関連団体の推計によると、発生する費用は約160億円。
人件費だけでなく、システム改修費や材料費なども含まれるためです。
アパレル不況で、足元が危うい財務状況の中で、この出費は手痛いものになります。
このため、業界は役所と交渉して、「一目で税込み価格を伝えることができれば、付け替えなくてもいい」という折衷案的結論を引き出したんですね。
店内にPOP、タブレット、デジタルサイネージなどで、税込み価格を表示する、商品陳列棚などに大きく税込み価格を表示する、税抜き価格と税込み価格の価格読み替え表を掲示するといった対応が認められました。
この騒動の背景にあるのは、消費者の価格に対する反応です。
消費税は3%、5%、8%、10%と小刻みに引き上げられてきました。
アパレル業界の場合、14年の8%への引き上げを契機に不況へと突入したといっても過言ではありません。無論、大量生産・大量販売・大量廃棄といった業界構造にも不況の要因があったとしても、価格に敏感な消費者が年々増えていった、言葉を言い換えれば生活防衛せざるを得ない層の増大という問題にも行き着く。
心配なのはコロナ禍で急速に増大した財政赤字を改善するため、再び消費税の論議がなされないかということにあります。
景気後退の中での増税はあり得ないはずなんですが・・・。