日銀砲による急激な円安
強烈な円安が続いていますね。
為替レートといえば、・・・
今から約20年前の2003年、イラク戦争でアメリカのドルが不安定になり、
日本の円が安全通貨として買われました。1ドル=117円で落ち着いた円は
105円まで高騰。貿易収支は悪化して、日本国内の多くの企業が窮地に陥りました。
海外で日本製品が割高になって、国内市場では安い海外製品に負けて国産製品が
売れなくなってしまったからです。
ヘッジファンドの狙いは円の価値を最大限に釣り上げて、ピークのタイミングで売って
利ざやを稼ぐ。また債務履行が困難となった日本企業を食い物するハゲタカファンドも
暗躍していました。
この事態を憂慮した財務省はこの時に何をしたか。伝家の宝刀「日銀砲」を引き抜いた。
日銀砲とは、為替が不利になったときに日本銀行が市場介入し、相場を操作することを指す俗称ですね。
日銀にはヘッジファンドは束にかかっても敵わないほどの膨大な資金力があって、
為替相場の流れを大きく変えることができたんです。
日銀は2003年12月末から2004年3月にかけて円売りドル買いを続けました。
一説によると、その介入枠は30兆円。単純計算で1分間に10億円単位の注文を
24時間休みなく続けます。介入枠を使い果たすと、財務省が持つ200兆円の
米国債を随時日銀に売却して介入資金に充てました。
この日銀砲は1ドル110円になるまで徹底して続けられました。ヘッジファンドが
円買いをするたびに日銀が即座に円を売るので、相場はピクリとも動かない。
ヘッジファンドは資金を借金でまかなっていたため次々と破綻しました。
一説では、アメリカのヘッジファンド2000社が倒産したといわれていて、
海千山千の海外投資家から「日銀には逆らうな」と恐れられていました。
経済大国日本の面目躍如です。
ところで現在進行中の円安ドル高。
債券市場でアメリカがゼロ金利を解除して、金利上昇に踏み切って金融引き締めに
入ったことを受けて、日銀は3月29日から3日間、国債を無制限に買い入れる
「連続指値オペ」を初めて行ないました。日銀が市場で国債を買って円の垂れ流すこと
で金利上昇を抑えて、これまでどおり金融緩和を続けて景気の底割れを防ぐためですね。
その結果、日米金利差が開いて、ウクライナ情勢で「有事のドル買い」が顕著化した
こともあいまって、外国為替市場で円を売って高い利回りが見込めるドルを買う動きが
強まった。一時は1ドル=128円を突破する事態とまりました。
バブル崩壊以降の景気停滞で賃金率も上がらずに、もはや日本経済の衰退は決定的。
円の総合的な実力を示す1月の実質実効為替レートは約50年ぶりの低水準となる
67.55(2010年=100)まで低下しました。2013年に始まったアベニミクス異次元
金融緩和のツケでしょうか。
通貨の番人であるにもかかわらず円の信頼性を毀損して、企業(中小)の利益や庶民の
生活を締め付けてまで円安誘導政策を続けようとする日銀の真意はどこにあるんでしょう。
これまで何度も日本を救ってきた日銀砲、一体誰に向けて放たれているんでしょう。